左眼

 僕の左眼は、視力がほとんどない。
 その代わり、普通の人には見えないものが見える。

 例えば、小学生の頃。林間学校で山に行った時のことだ。
 山登りの途中にあった大岩の上で、山伏みたいな恰好をした人が瞑想していた。
 キャンプファイヤーでは、燃えさかる炎の中、ちっちゃいおばさんが踊っていた。
 縁日に行けば、屋台の隙間を縫って、狛犬が追いかけっこに興じている。
 友人の歴史あふれる家 (ぶっちゃけて言うなら、古くてカビ臭い日本家屋) にお邪魔すると、遊んで欲しそうな浴衣の少年に、じーーーっと見つめられる。
 ちなみにその友人は、一人っ子だ。

 ・・・正直、この左眼に感謝した記憶は、ほとんどない。
 見たものをそのまま口に出すと、大抵、気味悪がられるからだ。

 ただし、たった一度だけ、この左眼で良かったと思った出来事がある。
 忘れもしない高校の修学旅行。
 大阪行きの新幹線の窓から、雲がかかった富士山の上空に、一匹の神々しい龍が力強く天へ翔け上ってゆくのが見えたのだ。
 その光景は、図書館の画集で見た北斎の 「富士越龍図」 そのもので。
 もしかしたら、北斎も僕と同じように、見えざるものを見る人間だったのかもしれない、と僕はしきりに感動していた。
 すると、八津 ≪やつ≫ が言うんだよね。『昔は、あの龍より俺の方が百倍は格好良かった』 って。
 そんなくだらない見栄を張るから、僕は八津を踏み潰しそうになった。

 八津。
 彼は僕の友人だ。といっても、人間ではない。
 小指の爪くらいの大きさの、黒い蜘蛛だ。

 八津によると、僕の左眼で見える不思議な者たちは、いわゆる、「八百万の神」 なんだそうだ。
 ああ見えて、八津自身も神様みたいなものらしい。正確には土蜘蛛の眷属で、かつては、力ある土地神だったとか。
 けれど、遥か昔にいろいろあって、八津はその力の大半を失ってしまったのだという。
 なので今は、見た目フツーの蜘蛛である。フツーといっても、僕以外の人には見えないけど。



 まあ、おかしな蜘蛛にひっつかれてはいるけれど、僕自身はいたってフツーの学生だ。
 これは、そんな僕が大学生になる直前の、一人暮らしを始めた頃の話である。



 花曇りの昼下がり。
 荷解きも終わり、家電も揃えて余裕が出た僕は、新居であるアパートの周辺を散歩しようと思い立った。
「八津、散歩行くけど」
『俺も行く』
 八本の足をカサカサ動かしてテーブルの上を移動し、黒蜘蛛はピョンと僕の肩に飛び乗った。その仕草に神々しさは全くない。彼は僕にとって、気持ち悪いペットか、腐れ縁の幼馴染みたいなものだ。
 そんな八津を肩に乗せて、外に出る。ひんやりした空気が心地いい。
 足の向くままに歩き出す。今日はすごく気分がいい。
「・・・よっしゃあ、四月から頑張るぞう」
『今考えてることを当ててやろうか。お前、大学デビュー目指してんだろう。新しい自分に新しい出会い! いいねえ若人は』
 からかい混じりの声音に、僕の機嫌が急降下する。
「あのねえ・・・八津。お前、潰されたいの?」
『不機嫌になったところを見ると、図星のようだな』
 楽しげに言われて、僕はむっつりと黙りこんだ。
 年齢=彼女いない暦の僕は、ここらで勝負をかけねばそろそろやばい。いや、すでに十分遅れを取っている。
 とにかく、高校までの内気な自分を、どうにかして変えたいとあせっていたのは事実だった。
 ────だけど、こいつに指摘されると無性に腹が立つのはなぜだろう。

『お』
 ひひひ、と下品に笑っていた黒蜘蛛が、何かに気づいて声を上げた。
「何」
『あっちを見てみろよ』
 小さな足がちょいと僕の左前を指差し、僕は視線を移動させた。
 そこは、空き家らしかった。朽ちかけた家屋に人の気配はない。
 しかし、雑草が生い茂る庭にたおやかに立つ、見事な枝振りの梅の木が、ひときわ目を引いた。
 その枝に紅い花がぽつぽつ咲いている。盛りを過ぎているが、それにしたって随分と遅咲きの梅だ。
 散り際の花を近くで見てみようと思い、二、三歩進む。そこで、僕はぴたりと足を止めた。・・・苔むした幹にもたれかかるように、美しい女の人がひっそりと佇んでいたのだ。
「あれは・・・」
『梅の花の精、だな』
 八津の無造作な返答が、脳内を軽く素通りしてゆく。今まで味わったことのない感覚が、電流のように体を突き抜けていった。

 ────今まで僕は、不思議なものをたくさん見てきた。
 中には、神様っぽい綺麗な姿をしている者も、もちろんいた。
 ・・・しかし、それらの記憶が全部色褪せてしまうほど、その女の人は美しかった。
 透明感のある肌は磨かれた象牙のようにつややかで、頬はわずかに赤みが差している。
 品良く伏せられた睫は長く、眉は柔らかな弧を描き、紅を引いた唇は枝に咲く紅梅そのもので、上品な彩りを彼女の面差しに添えていた。
 天女のような薄紅の羽衣を纏った彼女は、何かを待っているかのように、じっと俯いている。憂いを秘めたその表情に・・・僕の心臓は鷲掴みにされた。
『おいおい、分かってるだろうけど、あいつは人間じゃねーぞ』
 僕の異変を察して、黒蜘蛛が揶揄する。
「うるさい、そんなんじゃないよ」
『気になってるのが丸分かりだよ。・・・なあ、お前、そんならいっぺん、あいつと話してみたらどうだ?』
「八津、通訳してくれるの?」
『俺に、お前の耳と口をくれりゃあ、やってやれないこともない』
 人間なら舌なめずりしていそうな口調で、黒蜘蛛は言う。
「・・・アホか。そんなことしたら、僕が口きけなくなっちゃうじゃん。嫌だよ」
『そうか。乗ってくるかと思ったのに、残念だ』
 彼は、大して残念でもなさそうに言って、けけけ、と笑った。
 ・・・八津は、隙あらば僕の口や耳を奪おうとする。
 本気っぽくはないけど、その度に、この蜘蛛は自分と異なる存在なんだと再認識してしまう。まあ、慣れたけど。
 それより目の前の美女の方が問題だ。彼女を見ているだけで、アドレナリンがじわじわ分泌されてくるのが分かる。
『もう帰るのか』
「黙ってくれる?」
 八津にからかわれながら、僕は逃げるようにその場を立ち去った。
 さすが、彼女いない暦=年齢なチキンっぷりである。
 そうやって急いでアパートに戻った後も、心臓は全く鳴りやまなかった。・・・いわばこれは、僕の遅咲きの初恋だったのだ。



 ────その日の夜、夢を見た。あまり思い出したくない、昔の夢だ。

 五歳の頃。僕は病気で死の縁を彷徨っていた。
 誰もいない真っ暗な部屋で、一人苦しみに喘ぐ、そんな夜だった。
 あの、不思議な声が聞こえたのは。

『  ナア、オマエ  』
「う・・・だれか、いるの・・・?」
『オレ ハ ヤツ。ツチグモ ダ』
「・・・つちぐも?」
 朦朧とした意識の中、声の主を探そうと部屋を見回した。
 けれど、何も見えない。夜の闇が漂っているばかりだ。
『 オマエ ハ コノママ シヌ ダロウ 』
 闇の中から、その声は言った。
「しぬ?」
『ソウ ダ、 シヌ』
 ────首を振る医者。両手で顔を覆う両親。母さんの嗚咽。
 昼間見た光景が、幼い僕の脳裏によぎった。
 ・・・この時の僕が、死という概念を、正確に理解していたとは思えない。ただ、彼が囁いた 『死』 という響きに、闇に飲まれるような恐怖を感じたのは、確かだ。
「死にたくない・・・」
 苦しげな息と共に、願望を彼に告げた。
『   ナラ 左眼 ヲ ヨコセ  』
「ひだり、め?」
『クレタラ オマエ ヲ タスケテ ヤロウ』
「そうすれば、ぼくは、死なない?」
『アア』
「・・・いいよ。左眼をあげるから、たすけて」
『  デハ ソノ 左眼 モライ ウケル  』
 その瞬間、夜の闇よりも濃い蜘蛛の影が、部屋を覆った。
 左眼が燃えるように熱くなり、恐怖と痛みで僕は悲鳴を上げた。そして、そのまま意識を失ったのである。



 はっと目を覚ますと、見慣れない天井があった。一瞬自分の居場所が分からなかった。けれど、すぐに思い出す。ここは、数日前から住んでいるアパートだ。
 汗をびっしょりかいた体を起こし、夜明け前の薄暗い部屋を出て、ふらふらとキッチンに向かう。蛇口を捻ってコップに水を汲み、一息に飲んだ。
『大丈夫か』
「ああ、お前と初めて会った時の夢を見たよ」
『その夢、久しぶりだな』
 そう言って、シンクの縁に佇む小さな黒蜘蛛の目は、四つ。
 八津は、力を失った際に目と耳と口を奪われたのだという。彼は、その時のことを詳しく話してくれない。妙にプライドの高いところがあるから、あまり触れられたくないのだろう。
 蜘蛛は本来なら八つの眼があるが、僕が片眼しかあげてないから、彼は半分の四つしか眼がない。
 あの日以来、僕と八津は感覚が繋がってしまったらしい。だから、僕には八百万の神々が見える。
 ただし神々の声は聞こえない。八津だけは例外で、感覚を共有しているから特別に意思疎通ができるのだそうだ。
 まあ、お陰で僕は医者も匙を投げた病気から奇跡的に回復し、死を免れた。ちっさい蜘蛛だけど、腐っても神である。

 再び部屋でごろりと横になったものの・・・すっかり、眼が冴えてしまった。
「散歩にでも行こうかな」
『あの、梅の精のところへか』
「別にどこだっていいだろう」
 不貞腐れた僕を見て、黒蜘蛛はおかしそうに、くくくと笑った。



 薄明の中、昨日と同じ場所に行くと、かの人はやはり同じ場所でじっと佇んでいた。
「彼女、何かを待ってるみたいに見えるなあ。何を待ってるんだろう」
『・・・さあてね』
 朝靄を纏った神秘的な彼女にぽわーっとなっていた僕は、黒蜘蛛の不自然な間に気づかなかった。
 ふと眼を上げると、もう一本、同じ庭に見事な木があることに気づく。こちらは、梅ではない。たぶん、桜だ。
 昨日は全く気づかなかったが、これまた素晴らしい大木だ。手前の梅より二まわりは大きい幹が天に向かって枝分れし、その先に無数の蕾をつけている。
「こっちは早咲きの桜だね」
『ああ』
「桜の精はまだ、いないみたい・・・」
 ・・・そういうことか。ああ、と天を仰いだ。
 何てことだろう、僕は、気づいてしまった。美しい梅の花の精が、桜に向かって眼を伏せている、その理由に。
「・・・・・・彼女は、早咲きの桜を待ってるんだね」
『ま、そういうことだ。半日にも満たない初恋だったな』
「ああああ・・・」
 八津の追い討ちに、僕はあっけなく撃沈した。
 ────おそらく彼女は、隣に咲く桜の精に会うために、花の時期を遅らせたのだろう。そして桜の精もきっと、彼女のために早く花を咲かせようとしている。
『まあ、神に横恋慕するには、お前は三百年ばかり早いな』
「・・・ほんと、お前はうるさい」
『いだだだだっ』
 傷心に塩を塗りこんだ蜘蛛を摘み上げて、潰さない程度に力を込めてやった。



「・・・はぁ」
『だから、溜息ばかりついてないで、真面目に大学デビューを目指したらいいだろ。
人間には、人間がお似合いなんだよ』
「お前に、人の気持ちなんてわかんないよ」
『そうだな、寿命も短いし。溜息ついてる間にすぐジジイになるだろうよ』
「もう、八津は黙っててよ」
 励ましてんだか何だか分からない黒蜘蛛にぴしゃりと言って、ついでにもう一つ溜息を零す。そして窓の外を見上げた。
「あ、雨」
 アパートの窓硝子に水滴が落ちる。空を覆った厚い雲から、ぽつり、ぽつりと雨が降り出していた。そういえば、今夜の予報は雨だった。
 街灯の明かりに、小さな雨粒が光る線のように浮かんでは消える。その光の線は、僕がぼんやりと街灯を眺めている間に少しずつ増えていった。
『あの梅も、この雨で全部散るかもしんねーな』
 八津が独り言のように呟いた。
 ・・・あれから数日。梅の木のところには、一度も行ってない。けれど、萎れかけてたあの梅の花は、すでにかなり散ったんじゃないだろうか。
 何だか、嫌な予感がする。
「ねえ八津、梅の花が全部散ったらどうなるの?」
『そりゃあ、あの女は消えちまうよ』
「っ、この馬鹿ーーーっ! それを早く言えよなっ!」
 言うが早いか、僕は蜘蛛と机の上に転がっていたセロハンテープを掴んで外へ飛び出したのだった。



 息を切らせて走る。その途中、雨が激しく降り出してきた。
 濡れるのも構わず、梅の木の元へ辿り着く。根元には案の定、たくさんの花弁が散っていた。お願い、と祈りながら枝を見上げると、花は────まだ、幾つか残されていた。
 梅の花の精もまだ、そこにいた。
「良かった」
 雨は、木の下に佇む梅の精を通り抜け、地面を激しく叩いていた。彼女の向こうに景色が透けて見える。
 前は、こんなんじゃなかったのに。たぶん、彼女に残された時間が少ないのだ。
「お前も手伝えよ」
『何で俺が』
「いいから早くしろよ!」
 怒鳴り散らすと、八津は 『分かったよ』 と渋々同意した。
 『姉ちゃん、失礼するよ』 と断って枝に飛び移ると、彼はおしりの先から白い糸を吐き出して、残った梅の花が落ちないように固定していく。
 さすが長年の付き合いだ。阿吽 ≪あうん≫ の呼吸で僕の意図を理解してくれる。というか、八津が蜘蛛で良かった。
 僕も 「失礼します」 と声をかけて、彼女の本体である枝に手をかけた。
 残った紅の花を、一つ一つテープで固定していく。その間にも、無情な雨が降り注ぎ、次々と花を落としていく。僕は、無我夢中で花を枝に繋ぎ止めた。

 ────明け方。雨は、ほぼ止んだ。
 夜通し作業してたけど、その間人通りがなかったのは幸いだった。土砂降りの真夜中に、狂ったように花をテープで止める僕は、他人が見たらさぞかし気味が悪かっただろう。
 けれど、僕の心は満足感で溢れていた。彼女はまだ、確かにそこにいるのだから。
『まったく、こんなに働かせやがって』
「・・・ありがとう、八津」
 彼は、僕の手の届かない上方の花を固定してくれた。何だかんだで付き合いのいい八津に、心から感謝する。
 花はだいぶ散ったが、いくらかは残っていた。良かった、もう大丈夫だろう。疲れ切った僕は、木の根元に蹲る。
『ほら、向こうが咲くぞ』
 八津の声に、ゆっくりと上を仰ぎ見た。
 桜の枝先で、ふくらんだ蕾が音もなく次々と開いてゆく。
 ほぼ同時に、朝日がさっと差した。俯いていた彼女の美しい横顔を照らし出す。そして、前触れもなく彼女は顔を上げた。
(・・・ああ、やっぱり)
 彼女の目線を辿って、嘆息する。桜の大木の根元に、これまたひどく美しい男が立っていた。
 凛とした立ち姿に、男の僕でも見とれてしまうほどだ。
 平安の貴族のような服を雅やかに着こなした彼は、梅の精に歩み寄りそっと抱き寄せる。
 その刹那、憂いを帯びた彼女の表情が、花の精らしい華やかな笑みに変わった。
『あーあー、だから言っただろ。・・・なあ、泣くなよ』
「うるさいよ」
 ・・・僕の頬を、雨とは異なる温かい雫が伝う。これは断じて涙じゃない。心の汗なんだ。



『結局あの女、お前のことちっとも見ようとしなかったよな』
「気づかなかったんじゃないの。僕の声、聞こえないんだし」
『どうだかなー。神っつっても、結構我儘だからな』
「お前もな」
 憎まれ口を叩きつつ、溜息をついた。
「・・・僕は満足だよ、彼女の笑顔が見れたから」
『お前、絶対女に貢いで捨てられる類の男だよな』
「何とでも言え。今、最高に幸せなんだ」
 と強がりつつも、僕はあれ以来、あの庭の前を通ることができなかった。狭量な自分が少し情けない。

 ・・・しかし、今朝は避けて通るわけにはいかなかった。
 駅に行くには、あの空き家の前を通るのが一番近道で、しかも僕は大学の入学式に遅刻しそうなのだ。
「八津、行くよ」
『おう』
 慣れた仕草で肩に飛び移り、八津はひょいひょいと僕の頭に掴まる。
 アパートの階段をダッシュで駆け下り、全速力で駅に向かう。
 と、その途中、異変に気づいて僕は足を止めた。
「何、これ・・・」
 一晩中雨と戦って花を繋ぎ止めた梅の木も、朝日の中、綺麗な花弁を綻ばせた桜の木も、なくなっていた。傾いだ家も、庭を覆っていた雑草も、全てがなくなって綺麗さっぱり更地になっている。
「ひどい・・・こんなのって」
 あまりの衝撃に、崩れ落ちそうになる膝を必死で支える。
『・・・・・・。神だって、人間にかなわないことも、あるんだよなあ』
 八津が呟いた。その声には、長く生きてきた者の諦観と、慰めの響きがあった。
 悔しさと、滅多に見せない八津の優しさに、涙腺が崩壊しそうになった時、
「そこにあった梅と桜なら、きちんと他所に移されましたよ」
 振り向くと、近所の住人と思しきお婆さんがにこりと笑って教えてくれた。
「遅咲きの梅と、早咲きの桜でしょう? この辺では有名だったから、東京の樹医さんが保護に乗り出してくれて、ここが整地される前に市立公園に移植されたんですよ」
「そ・・・そうですか。それは、良かった・・・」
 へなへなと力が抜けた。危うく座り込みそうになる。
 って、そんなことしてる場合じゃない。遅刻しそうなんだ!

「教えてくれてありがとうございます!」
 お婆さんに礼を言って、再び走り出す。
 仲睦まじく寄り添う二人が脳裏をよぎり、僕は知らず微笑を浮かべた。
『良かったな。これで心置きなく大学デビューできるな』
「・・・うっさいよ。てゆーか、そもそも何で八津がその単語知ってんの」
『そりゃ、お前がそういうハウツー本を読んでたからだろ』
「げっ、僕が寝てる間にこっそり見たのか!」
『だって、気になるじゃねーか』
 けけけ、と黒蜘蛛が笑う。
 全く、と空を仰げば、一反木綿のようなものがヒラヒラ飛んで行くのが見えた。
 神様が見える生活ってのも、悪くない。
 この時、ほんの少しだけ、そう思ってしまったのだった。


<END>


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