虚空の方舟 エピローグ

くっきりと晴れた青い空が、丘の上に立つ二つの影を浮かび上がらせている。
今日は、ウルス近くの草原で月に向かう宇宙船が打ち上げられる予定だった。

「あーあ、私も行きたかったわ」
ぼやく妻に、エドは苦笑した。
「いつか行けるよ」
「それもそうね」
レナは微笑んで、膨らんだお腹を愛おしそうにゆっくりと撫ぜた。
「この子も連れて行けるかしら」
「きっと」

彼らも製造に携わった宇宙船は、三十六年ぶりに月面基地に赴く。
そこから、生命の種と、地球再生の技とを持ち帰る予定だ。

丘の頂上から見渡せる草の海に、陽光を反射するつややかな宇宙船が巨大な発射台に据えられていた。
その風景は、二人に様々なものを思い起こさせる。
過去と、現在と、未来を。
そして、連綿と続くこの星の命の繋がりに、終わりがないようにと祈らずにはいられない。
それが清濁を併せ持つものだと、知っていてもなお。

やがて、定刻どおり宇宙船が発射された。
垂直に空を駆けてゆく銀色の機体は、雲を突き抜けてどこまでも高く昇っていった。


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