沢田麻紀の場合 5

・・・早く出て来い。
念じながら、携帯の時計をちらりと見る。




カバンからはみ出した抱き枕に心の中でライバル宣言して、ゲートに消えた後姿を見送ってから、早八ヶ月。
アーさんは再びここにやってきて、四月から日本の大学に留学する。




────携帯から顔を上げると、会いたかった人はすぐそこにいた。

「マキさーーーん!」
「や、抱きつくな! ここ日本!」

到着口から出てきた、テンション高めの金髪兄さんをひっぺがし、不機嫌な表情を作る。
ほんと、全っ然かわいくないよね。
自分でも、嫌んなるわ。




なのに。




「ワー・・・ Real ツンデレ!」

なぜか喜ぶこの不思議な外国人。
その言い方がおかしくて、思わず笑ってしまう。




生まれた国も、話してた言葉も違う。

だけどね。
もっと、もっと大事なことがあるんだ。

それを知ることができたから、会えない時間も無駄じゃなかった。




彼は、にこりと笑い、いつかのように指に触れる。
その仕草は、ただ、優しくて。
その手は、何よりも温かい。


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