リーゼントな山田君 大学一年生 夏編  山田君視点

夏休みに入ってから、部活三昧の日々。

大会が近かったからしょうがない。

けど俺は、そろそろ限界だった。



* * *



「で、マッキーはアーさんと付き合うことになったんだって! 良かったよねー」

久しぶりに会った彼女は、沢田に彼氏ができたことを自分のことのように喜んでいる。

「・・・ああ」

上の空な返事。 許せ沢田。 俺は今それどころじゃない。

「・・・どしたの? 部活で、疲れてる?」

首を傾げた彼女に、首を振る。

「・・・・・・明後日の土曜。 暇?」
「? 何も予定ないよ」
「・・・うちに、来てほしい」
「うん! お姉さんとお母さんの好きなケーキ、買ってくね」

彼女は家族公認だから、時々家に遊びに来る。

でも今回はそういうのではなく。

「土曜は、夜まで誰もいない」

・・・・・・間を置いて、彼女の頬が赤く染まる。



三分、待った。 だめか、と思ったその時。

「・・・行く」

小さく彼女が呟いた。



────そして土曜日。

「・・・・・・おじゃまします」

緊張した面持ちの彼女の手を引く。

部屋の扉を閉める音が、シンとした家の中にやけに響いた。

そっと近づいて、額にキスを落とす。

優しい香りに目を閉じる。



「線香花火、買ってきたの」

帰る間際、彼女は言った。

日がすっかり暮れた庭で、膝をつき合わせて、舞い散る火花を見つめる。

「・・・山田君」
「ん」
「・・・・・・だいすき」

目を細めると、彼女も嬉しそうに笑った。

会いたい、一緒にいたい、独占したい。

どうにもならないこの感情は彼女の言葉で正当化される。

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