リーゼントな山田君 大学三年生 春編 山田君視点

彼女を初めて見たのは、中学三年の時だった。



* * * *



小学生の時から通う道場に行く途中。

その公園で、足にギブスをした彼女は、ぼんやりとベンチに座っていた。

次に見た時は、ラケットを振っていた。

よろめいたりするのを、危なっかしいな、と思いながらも声はかけられなかった。



次に彼女に会ったのは、高校の入学式。

勇気を振り絞った。

友達になった。



少しでも彼女に近づけるように、道場を辞めて空手部に入部した。

だが、彼女との壁は厚く、なかなか打ち解けられなかった。



ある日、学校の裏手で一人練習してる彼女を見かけた。

公園でのことを思い出す。

彼女は人知れず、努力する。



避けられたりもしたが、いろいろあって今、彼女は俺の隣にいる。

伊野には一応感謝している。 本人には絶対言わないが。



* * * *



高校で彼女と再会して、そして俺がリーゼント一筋になって、五年が経った。

今は、違う髪形で彼女の隣を歩く。

「いつか、一緒のおうちに帰れたらいいね」

・・・彼女が言ったことと同じようなことを、思ってた。

頷くと、嬉しそうに笑う。



・・・本音を言えば、帰したくない。



だが、似合わないことをしても痛いだけだ。 身の程は分かってる。

必要なのはそんなんじゃない。 彼女を全力で幸せにするという心意気だ。



好きな人が隣にいる。

自分との未来を願ってくれる。

俺は世界一の幸せ者だ。

そう思いながら、彼女の小さな手を取った。



・・・数年後、彼女にプロポーズした。

イメトレを死ぬほどやった。

彼女は涙ぐんで、そして笑って大きく頷いた。


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